1. 技術開発戦略の立案・技術開発計画
「新しい技術をどう使って、どうやって会社を儲けさせるか」という戦略の立て方を学びます。
技術動向を予測し、ロードマップ(いつまでに何を実現するかの予定表)を引いて、世の中を変える「イノベーション」を目指します。
(1) 技術経営とイノベーションの種類
- MOT
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Management Of Technology(技術経営)
ただ「すごい技術」を発明するだけでなく、それを「どうやってビジネスにして儲けるか」をマネジメント(管理)する考え方です。 - 技術ポートフォリオ
- 自社が持っている様々な技術について、「将来性があるか」「どれくらいお金(研究開発費)をつぎ込むか」を分析・分類する一覧表のことです。
- 特許戦略 / 技術予測
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特許戦略: ライバルに真似されないように特許を取ったり、逆に他社の特許を使わせてもらったりして競争を有利にする戦略。
技術予測手法: 「5年後にAIはどうなっているか」などを予測すること(例:専門家にアンケートを繰り返すデルファイ法など)。
イノベーション(革新)の3つの種類
イノベーションとは「全く新しい価値を生み出し、社会を変えること」です。
例:ガラケー時代に、初めてiPhone(スマートフォン)が誕生したこと。
例:職人が手作りしていた車を「ベルトコンベア」で大量生産できるようにしたこと。
(2) 新事業を阻む3つの壁(川・谷・海)とジレンマ
新しい技術を思いついてから、世の中で大ヒットするまでには、いくつかの厳しい「関門」があります。試験で非常によく出るキーワードです。
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① 魔の川 (Devil's River)
「基礎研究」→「製品開発」の間の壁
研究室で「すごい技術(基礎研究)」を発見しても、それをどうやって「具体的な製品」にするかのアイデアが思いつかず、研究だけで終わってしまう障壁です。 -
② 死の谷 (Valley of Death)
「製品開発」→「事業化」の間の壁
製品のアイデアはできたけれど、それを工場で大量生産して売るための「莫大な資金」が足りず、事業化する前に会社が力尽きてしまう(資金ショートする)障壁です。 -
③ ダーウィンの海 (Darwinian Sea)
「事業化」→「市場での大成功」の間の壁
無事に発売できたとしても、すでにいるライバル企業や他社の製品との過酷な生存競争(ダーウィンの進化論のような弱肉強食)に勝たなければならない障壁です。 -
④ キャズム (Chasm)
「新しもの好き」と「一般大衆」の間の壁
発売初期の「新しもの好き(アーリーアダプター)」には売れたけれど、そこから先の「普通の一般大衆(アーリーマジョリティ)」に広まるまでの間にある深い溝のこと。ここを越えられないとマニア向けの商品で終わってしまいます。
イノベーションのジレンマ
「大成功している立派な大企業」が、顧客の意見を真面目に聞きすぎて今の製品の改良(画質を良くするなど)ばかりに夢中になり、全く新しい安価で破壊的な技術(デジタルカメラや動画配信など)を見くびって、結果的にベンチャー企業に負けてしまう現象です。
「立派に経営しているからこそ、新しい波に乗り遅れる」というジレンマ(板挟み)状態のことです。
(3) アイデア創出と検証の手法
アイデアを生み出す考え方
デザイナーがデザインを考えるときのプロセスを使って、ビジネスの課題を解決する思考法です。
一番の特徴は、「徹底的にユーザーに共感(ユーザーの気持ちになりきる)すること」からスタートする点です。
ターゲットとなる架空の超具体的なユーザー像(ペルソナ)を作る手法。
(例:「30歳のエンジニア、京都在住、休日はカフェで読書する…」のように設定し、その人が欲しがるものを考えます。)
現在から積み上げて考える(フォアキャスティング)のではなく、まず「理想の未来(ゴール)」を想像し、そこから逆算して「今何をすべきか」を考える手法。(SDGsや環境問題の解決によく使われます)
Hack(プログラミング)とMarathon(マラソン)を合わせた造語。エンジニアやデザイナーが集まり、数日間徹夜などで集中してプログラムやサービスを作り上げるイベントのこと。
アイデアを検証する手法(PoC と PoV)
いきなり多額のお金をかけてシステムを作るのではなく、まずは「小さく試す」のが現代の主流です。
(例:新しいAIのアイデアを思いついたが、本当にAIが正確に画像を認識できるのか、簡単なプログラムを組んでテストしてみること)
(例:AIの画像認識はできたが、それを使って本当にお客様は喜んでお金を払ってくれるのかをテストしてみること)
(4) 資金調達と事業モデル
ビジネスモデルと立ち上げ方
新規事業の「誰に」「何を」「どうやって提供し」「どうやって儲けるか」を、9つのブロック(顧客、価値提案、収益の流れなど)からなる1枚のキャンバス(紙)に書き出して整理するフレームワークです。
リーン=無駄がない、という意味。
お金と時間をかけて完璧な製品を作るのではなく、まずは必要最小限の機能だけを持った試作品(MVP:Minimum Viable Product)をパパッと作り、客の反応を見て、ダメならすぐに軌道修正していく、無駄を省いた起業手法です。
自社のシステムの機能やデータを、他社が使えるように公開(API公開)し、それらを組み合わせて新しいサービスを生み出し、経済圏を広げること。
(例:タクシー配車アプリの「Uber」が、地図機能は自社で作らず「GoogleマップのAPI」を呼び出して使っている状態など)
スタートアップへの投資(VC と CVC)
「死の谷」を越えるためには資金が必要です。ベンチャー企業にお金を出してくれる投資家の種類です。
| 用語 | 正式名称 | 説明 |
|---|---|---|
| VC | Venture Capital (ベンチャーキャピタル) |
将来大きく成長しそうな未上場のベンチャー企業に対して、「投資(お金を出すこと)」を専門に行う会社です。 目的は、ベンチャー企業が上場したときに株を売って「大きなお金(キャピタルゲイン)を儲けること」です。 |
| CVC | Corporate Venture Capital (コーポレートベンチャーキャピタル) |
投資専門の会社ではなく、「普通の事業会社(トヨタやソニーなどの大企業)」が、自社の資金を使ってベンチャー企業に投資することです。 目的は、ただお金を儲けることではなく、ベンチャー企業の新しい技術を取り入れて「自社の本業との相乗効果(シナジー)を生み出すこと」です。 |
過去問演習(技術戦略マネジメント)
MOT(Management of Technology)の目的として,適切なものはどれか。
- 企業経営や生産管理において数学や自然科学などを用いることで,生産性の向上を図る。
- 技術革新を効果的に自社のビジネスに結び付けて企業の成長を図る。
- 従業員が製品の質の向上について組織的に努力することで,企業としての品質向上を図る。
- 職場において上司などから実際の業務を通して必要な技術や知識を習得することで,業務処理能力の向上を図る。
製品の製造におけるプロセスイノベーションによって,直接的に得られる成果はどれか。
- 新たな市場が開拓される。
- 製品の品質が向上する。
- 製品一つ当たりの生産時間が増加する。
- 歩留り率が低下する。
マーケティングにおけるイノベーター理論では,新しい製品やサービスが普及していく過程に沿って,消費者を,イノベーター,アーリーアダプター,アーリーマジョリティ,レイトマジョリティ,ラガードという五つのグループに分ける。このとき,アーリーアダプターからアーリーマジョリティへの普及において生じる,越えることが困難な隔たりを表す用語として,最も適切なものはどれか。
- カニバリゼーション
- キャズム
- 死の谷
- レッドオーシャン
特定の目的の達成や課題の解決をテーマとして,ソフトウェアの開発者や企画者などが短期集中的にアイディアを出し合い,ソフトウェアの開発などの共同作業を行い,成果を競い合うイベントはどれか。
- トレードフェア
- ハッカソン
- パネルディスカッション
- レセプション
新しい概念やアイディアの実証を目的とした,開発の前段階における検証を表す用語はどれか。
- CRM
- PoC
- RAS
- SLA
新しいビジネスモデルや製品を開発する際に,仮説に基づいて実用に向けた最小限のサービスや製品を作り,短期に顧客価値の検証を繰り返すことによって,新規事業などを成功させる可能性を高める手法を示す用語はどれか。
- カニバリゼーション
- 業務モデリング
- デジタルトランスフォーメーション
- リーンスタートアップ
APIエコノミーに関する記述として,最も適切なものはどれか。
- インターネットを通じて,様々な事業者が提供するサービスを連携させて,より付加価値の高いサービスを提供する仕組み
- 著作権者がインターネットなどを通じて,ソフトウェアのソースコードを無料公開する仕組み
- 定型的な事務作業などを,ソフトウェアロボットを活用して効率化する仕組み
- 複数のシステムで取引履歴を分散管理する仕組み
ベンチャーキャピタルに関する記述として,最も適切なものはどれか。
- 新しい技術の獲得や,規模の経済性の追求などを目的に,他の企業と共同出資会社を設立する手法
- 株式売却による利益獲得などを目的に,新しい製品やサービスを武器に市場に参入しようとする企業に対して出資などを行う企業
- 新サービスや技術革新などの創出を目的に,国や学術機関,他の企業など外部の組織と共創関係を結び,積極的に技術や資源を交換し,自社に取り込む手法
- 特定された課題の解決を目的に,一定の期間を定めて企業内に立ち上げられ,構成員を関連部門から招集し,目的が達成された時点で解散する組織