情報システム戦略

1. 情報システム戦略の策定と体制

企業が経営目標を達成するために、IT(情報システム)をどのように活用するかという方針や計画のことです。
「なんとなくPCを入れる」のではなく、「経営戦略と整合性をとって」計画的に導入することが重要です。

策定のプロセス

1. 経営環境・ビジネスプロセスの理解
2. 現行業務・システムの調査
3. IT動向の調査
4. 基本戦略の策定
5. 情報システム化基本計画の策定(中長期的な全体計画)

推進体制と責任者
CIO (Chief Information Officer)

最高情報責任者
企業の情報戦略における最高責任者。経営陣の一員として、IT活用の方針を決定する役員。

CDO (Chief Digital Officer)

最高デジタル責任者
デジタル技術(AIやIoTなど)を活用して、新規事業の創出やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する責任者。

2. 企業の戦略性を向上させるシステム

全体計画に基づき、個別のシステム開発計画を立てます。
企業活動を統合的に管理するための代表的なシステム(用語)を覚えましょう。

ERP

Enterprise Resource Planning(企業資源計画)

「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源を一元管理し、有効活用する考え方やシステム。
統合基幹業務システムとも呼ばれ、会計、人事、生産、販売などを一つのシステムで管理します。

CRM

Customer Relationship Management(顧客関係管理)

顧客の情報を一元管理し、顧客との良好な関係を築いて満足度や売上を向上させる手法。
「あのお客様は先月これを買ったから、次はこの商品を勧めよう」といった戦略に使います。

SFA

Sales Force Automation(営業支援システム)

営業活動をITで支援・効率化するシステム。
商談の進捗状況や顧客情報を営業チーム全体で共有し、属人化(その人しか分からない状態)を防ぎます。

SCM

Supply Chain Management(供給連鎖管理)

原材料の調達から製造、物流、販売に至るまでの一連の流れ(サプライチェーン)全体の情報を共有・管理し、最適化する手法。
在庫の適正化やリードタイム(納期)の短縮を目指します。

3. エンタープライズアーキテクチャ (EA)

巨大な企業や組織(エンタープライズ)の構造(アーキテクチャ)を整理し、「全体最適」を図るための設計手法です。
「各部署がバラバラにシステムを作ってしまって連携できない(部分最適)」という状態を防ぎます。

EAの最適化プロセス(As-Is と To-Be)

EAでは、現状と理想のギャップを埋める形で最適化を進めます。このとき作成されるモデルが試験でよく問われます。

As-Is モデル
現状
現在の業務とシステムの姿

ギャップ分析と移行計画
To-Be モデル
理想
将来のあるべき姿
  1. As-Isモデルを作成し、現状の課題を洗い出す。
  2. 目標とするTo-Beモデルを作成する。
  3. 両者を比較し、理想に近づけるための計画を立てる。
EAの4つの階層

EAでは、組織を4つの層に分けて分析・整理します。

  • BA (Business Architecture):ビジネス(政策・業務)体系。
    業務の流れや組織の目標。 DFD, 業務フロー図
  • DA (Data Architecture):データ体系。
    どんなデータを使うか、データの関連性。 E-R図
  • AA (Application Architecture):アプリ体系。
    どんな業務アプリを使って機能を実現するか。 情報システム関連図
  • TA (Technology Architecture):技術体系。
    ハードウェア、ネットワーク、OSなどの技術的基盤。 ネットワーク構成図
その他のマネジメント用語
PMO
Program Management Office。
個別のプロジェクトを支援し、組織全体のプロジェクト管理の品質を向上させる専門部署。
KGI / KPI
KGI (重要目標達成指標):最終的なゴール(例:売上1億円)。
KPI (重要業績評価指標):ゴールに向かう中間プロセスの指標(例:訪問件数100件)。

過去問演習(情報システム戦略)

令和3年度 問62

A社は,ソリューションプロバイダから,顧客に対するワントゥワンマーケティングを実現する統合的なソリューションの提案を受けた。この提案が該当するソリューションとして,最も適切なものはどれか。

  • CRMソリューション
  • HRMソリューション
  • SCMソリューション
  • 財務管理ソリューション
平成31年春期 問61

エンタープライズアーキテクチャを構成するアプリケーションアーキテクチャについて説明したものはどれか。

  • 業務に必要なデータの内容,データ間の関連や構造などを体系的に示したもの
  • 業務プロセスを支援するシステムの機能や構成などを体系的に示したもの
  • 情報システムの構築・運用に必要な技術的構成要素を体系的に示したもの
  • ビジネス戦略に必要な業務プロセスや情報の流れを体系的に示したもの
平成28年春期 問62

エンタープライズアーキテクチャの"四つの分類体系"に含まれるアーキテクチャは,ビジネスアーキテクチャ,テクノロジアーキテクチャ,アプリケーションアーキテクチャともう一つはどれか。

  • システムアーキテクチャ
  • ソフトウェアアーキテクチャ
  • データアーキテクチャ
  • バスアーキテクチャ
令和4年度 問61

エンタープライズアーキテクチャにおいて,業務と情報システムの理想を表すモデルはどれか。

  • EA参照モデル
  • To-Beモデル
  • ザックマンモデル
  • データモデル

業務プロセス

1. 業務プロセスの改善と問題解決

システムを入れるだけでなく、仕事のやり方そのものを見直して最適化することが重要です。

BPR

Business Process Reengineering(業務改革)

既存の業務ルールやフローを根本的に見直し、再設計すること。
「改善」レベルではなく「抜本的な改革」を指します。

RPA

Robotic Process Automation

これまで人間が行っていた定型的なPC作業(データ入力や転記など)を、ソフトウェアロボットに代行させて自動化する技術。

BPO

Business Process Outsourcing

自社の業務プロセスの一部(コールセンターや経理など)を、外部の専門業者に丸ごと委託すること。

BPM

Business Process Management

業務プロセスを継続的に改善し続ける管理手法。PDCAサイクルを回して最適化を図ります。

ワークフローシステム

Workflow System

稟議書や経費精算などの申請・承認手続きを電子化するシステム。
「紙の書類にハンコを押して回す」作業をデジタル化することで、手続きのスピードアップやペーパーレス化を実現します。

過去問演習(業務プロセス)

平成30年秋期 問62

BPOを説明したものはどれか。

  • 自社ではサーバを所有せずに,通信事業者などが保有するサーバの処理能力や記憶容量の一部を借りてシステムを運用することである。
  • 自社ではソフトウェアを所有せずに,外部の専門業者が提供するソフトウェアの機能をネットワーク経由で活用することである。
  • 自社の管理部門やコールセンターなど特定部門の業務プロセス全般を,業務システムの運用などと一体として外部の専門業者に委託することである。
  • 自社よりも人件費の安い派遣会社の社員を活用することによって,ソフトウェア開発の費用を低減させることである。
平成28年秋期 問63

企業活動におけるBPM(Business Process Management)の目的はどれか。

  • 業務プロセスの継続的な改善
  • 経営資源の有効活用
  • 顧客情報の管理,分析
  • 情報資源の分析,有効活用
平成27年春期 問63

ワークフローシステムを用いて業務改善を行ったとき,期待できる効果として適切なものはどれか。

  • 顧客の購入金額に応じて,割引などのサービスを提供できる。
  • 自社と取引先とのデータ交換の標準規約が提供できる。
  • 書類の申請から決裁に至る事務手続の処理速度が上がる。
  • 保管する商品の倉庫内での搬入搬出作業の自動化が可能となる。
令和元年秋期 問62

自社の経営課題である人手不足の解消などを目標とした業務革新を進めるために活用する,RPAの事例はどれか。

  • 業務システムなどのデータ入力,照合のような標準化された定型作業を,事務職員の代わりにソフトウェアで自動的に処理する。
  • 製造ラインで部品の組立てに従事していた作業員の代わりに組立作業用ロボットを配置する。
  • 人が接客して販売を行っていた店舗を,ICタグ,画像解析のためのカメラ,電子決済システムによる無人店舗に置き換える。
  • フォークリフトなどを用いて人の操作で保管商品を搬入・搬出していたものを,コンピュータ制御で無人化した自動倉庫システムに置き換える。

ソリューションビジネス

1. クラウドサービス

インターネット経由で、必要な時に必要なだけコンピュータ資源(サーバやソフト)を利用するサービスです。
提供される範囲によって以下の3つに分類されます。

分類 提供範囲(借りるもの) 例え(カレー作り) 具体例
SaaS ソフトウェアまで全部。
利用者はソフトを使うだけ。
レストランでカレーを食べる
(全部お任せ)
Gmail, Salesforce, Zoom
PaaS プラットフォーム(OS, DB)まで。
その上で動くアプリは自分で作る。
キャンプ場でカレーを作る
(場所と道具は借りる、具材は自分)
Google App Engine, Azure App Service
IaaS インフラ(ハードウェア, NW)だけ。
OSから自分で選んで入れる。自由度が高い。
原っぱでカレーを作る
(場所だけ借りる)
Amazon EC2, Google Compute Engine
クラウドの配置モデル
パブリッククラウド

クラウド事業者の設備を、不特定多数の利用者で共有する形態。
手軽で安価。AWS, Azureなど。

プライベートクラウド

自社専用のクラウド環境を構築・利用する形態。
セキュリティや独自性が高い。

ハイブリッドクラウド

パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスを組み合わせて利用する形態。
「機密情報は自社、Web公開はパブリック」のように、要件に応じて使い分けることで最適化を図ります。

2. ソリューションサービスの種類

SOA (Service Oriented Architecture)

業務機能を「サービス」という部品に分け、それらを組み合わせてシステムを構築する設計思想。
サービス指向アーキテクチャ。

オンプレミス (On-Premises)

自社でサーバ機器などを保有し、自社内でシステムを運用する形態。
クラウドの対義語。カスタマイズ性は高いが、初期費用や管理の手間がかかる。

ハウジング / ホスティング

ハウジング:自社のサーバを業者のデータセンターに「預かってもらう」サービス(場所貸し)。
ホスティング:業者が所有するサーバを「借りる」サービス(サーバ貸し)。

過去問演習(ソリューションビジネス)

平成29年秋期 問62

SOAを説明したものはどれか。

  • 企業改革において既存の組織やビジネスルールを抜本的に見直し,業務フロー,管理機構,情報システムを再構築する手法のこと
  • 企業の経営資源を有効に活用して経営の効率を向上させるために,基幹業務を部門ごとでなく統合的に管理するための業務システムのこと
  • 発注者とITアウトソーシングサービス提供者との間で,サービスの品質について合意した文書のこと
  • ビジネスプロセスの構成要素とそれを支援するIT基盤を,ソフトウェア部品であるサービスとして提供するシステムアーキテクチャのこと
平成25年秋期 問64

利用者が,インターネットを経由してサービスプロバイダ側のシステムに接続し,サービスプロバイダが提供するアプリケーションの必要な機能だけを必要なときにオンラインで利用するものはどれか。

  • ERP
  • SaaS
  • SCM
  • XBRL
平成29年春期 問63

ホスティングサービスの特徴はどれか。

  • 運用管理面では,サーバの稼働監視,インシデント対応などを全て利用者が担う。
  • サービス事業者が用意したサーバの利用権を利用者に貸し出す。
  • サービス事業者の高性能なサーバを利用者が専有するような使い方には対応しない。
  • サービス事業者の施設に利用者が独自のサーバを持ち込み,サーバの選定や組合せは自由に行う。
平成27年秋期 問64

企業が保有する顧客や市場などの膨大なデータから,有用な情報や関係を見つけ出す手法はどれか。

  • データウェアハウス
  • データディクショナリ
  • データフローダイアグラム
  • データマイニング
令和5年度 問47

ハイブリッドクラウドの説明はどれか。

  • クラウドサービスが提供している機能の一部を,自社用にカスタマイズして利用すること
  • クラウドサービスのサービス内容を,消費者向けと法人向けの両方を対象とするように構成して提供すること
  • クラウドサービスのサービス内容を,有償サービスと無償サービスとに区分して提供すること
  • 自社専用に使用するクラウドサービスと,汎用のクラウドサービスとの間でデータ及びアプリケーションソフトウェアの連携や相互運用が可能となる環境を提供すること

システム活用促進・評価

1. 活用促進・リテラシー

デジタルリテラシー

デジタル技術を安全・有効・効率的に活用する能力のこと。
格差が生じることをデジタルディバイド(情報格差)といいます。

普及啓発活動
  • e-ラーニング:インターネットを利用した学習形態。時間や場所を選ばず学習できる。
  • ゲーミフィケーション:ゲームの要素(ポイント、ランク、競争など)を業務や学習に取り入れ、モチベーションを高める手法。

2. データの分析・活用 (BI)

BI (Business Intelligence)

企業内のシステムに蓄積された膨大なデータを収集・分析・加工し、経営の意思決定に役立てる手法やツールのこと。
「経験や勘」だけでなく、「データに基づく客観的な判断」を行うために重要です。

データウェアハウス (DWH)

Data Warehouse

意思決定のために、基幹システムなどからデータを収集・整理して蓄積した「データの倉庫」
過去のデータを時系列に消去せずに保存し、分析しやすい形に整えてあるのが特徴。

ビッグデータ

Big Data

従来のデータベース管理システムでは扱いきれないほど巨大で複雑なデータ群。
3つのV(Volume:量、Variety:多様性、Velocity:頻度・速度)が特徴。

データマイニング

Data Mining

大量のデータ(ビッグデータなど)から、統計学やAIなどの手法を使って、未知の法則や関係性を見つけ出す(採掘する)技術。
例:「おむつとビールが一緒に買われる」法則の発見など。

データレイク

Data Lake

加工されていない「生のデータ」を、構造化・非構造化(画像やログなど)問わずそのまま大量に蓄積しておく場所(湖)。
DWHの前段階や、AI分析用のデータ置き場として使われます。

3. 評価・検証・廃棄

利用実態の評価・検証

システムが期待通りに使われているか、業務に貢献しているかを定期的にチェックします。
ログ分析モニタリングを通じて、パフォーマンスや利用状況を客観的に評価し、改善に繋げます。

情報システム廃棄

システムが寿命に達したり、コストが見合わなくなったりした場合、廃棄を検討します。
廃棄の際は、情報漏えいを防ぐためにデータの完全消去(物理破壊や専用ソフトによる上書き)が必須です。

過去問演習(システム活用促進・評価)

令和元年秋期 問69

デジタルディバイドを説明したものはどれか。

  • PCなどの情報通信機器の利用方法が分からなかったり,情報通信機器を所有していなかったりして,情報の入手が困難な人々のことである。
  • 高齢者や障害者の情報通信の利用面での困難が,社会的又は経済的な格差につながらないように,誰もが情報通信を利活用できるように整備された環境のことである。
  • 情報通信機器やソフトウェア,情報サービスなどを,高齢者・障害者を含む全ての人が利用可能であるか,利用しやすくなっているかの度合いのことである。
  • 情報リテラシーの有無やITの利用環境の相違などによって生じる,社会的又は経済的な格差のことである。
平成31年春期 問63

BI(Business Intelligence)の活用事例として,適切なものはどれか。

  • 競合する他社が発行するアニュアルレポートなどの刊行物を入手し,経営戦略や財務状況を把握する。
  • 業績の評価や経営戦略の策定を行うために,業務システムなどに蓄積された膨大なデータを分析する。
  • 電子化された学習教材を社員がネットワーク経由で利用することを可能にし,学習・成績管理を行う。
  • りん議や決裁など,日常の定型的業務を電子化することによって,手続を確実に行い,処理を迅速にする。
令和元年秋期 問63

企業がマーケティング活動に活用するビッグデータの特徴に沿った取扱いとして,適切なものはどれか。

  • ソーシャルメディアで個人が発信する商品のクレーム情報などの,不特定多数によるデータは処理の対象にすべきではない。
  • 蓄積した静的なデータだけでなく,Webサイトのアクセス履歴などリアルタイム性の高いデータも含めて処理の対象とする。
  • データ全体から無作為にデータをサンプリングして,それらを分析することによって全体の傾向を推し量る。
  • データの正規化が難しい非構造化データである音声データや画像データは,処理の対象にすべきではない。