企業活動

経営・組織論

1. 企業活動

企業は「ヒト・モノ・カネ・情報」という経営資源を活用して活動する組織です。
CSR (企業の社会的責任) や、環境に配慮した グリーンIT などが重視されます。

  • 株式会社:株主が出資し、経営は専門家(取締役)が行う「所有と経営の分離」が特徴。
  • コーポレートガバナンス:企業統治。企業が不正を行わないよう監視・統制する仕組み。
  • BCP (事業継続計画):災害時などに事業を止めない、早期復旧するための計画。

2. 経営管理

目標達成のために資源を最適配分し、PDCAサイクルを回して管理します。
特に「ヒト」の管理である HRM (Human Resource Management) が重要です。

主な手法・用語
  • OJT (On-the-Job Training):実務を通じた教育訓練。
  • ワークライフバランス:仕事と生活の調和。テレワークなどもその一環。
  • ワークシェアリング:1人分の仕事を複数人で分担し、雇用の維持や多様な働き方を実現する仕組み。
  • HRテック (HRTech):AIやビッグデータなどのIT技術を人事(Human Resource)領域に活用して業務を効率化すること。
  • ダイバーシティマネジメント:性別、国籍、年齢、障がいなど、多様な人材を活かして企業の競争力を高める経営手法。

3. 経営組織

企業の目的に合わせて、様々な組織の形があります。

職能別組織
営業、製造、経理など「仕事の内容(機能)」ごとに編成された組織。
専門性は高まるが、他部署との連携がとりにくい(セクショナリズム)。
事業部制組織
製品別や地域別などの「事業」単位で編成された組織。
各事業部が利益責任を持ち、意思決定が早いが、管理部門などが重複しやすい。
マトリックス組織
職能別と事業部制を組み合わせた網の目状の組織。
1人の社員が2人の上司(機能担当と事業担当)を持つため、指揮命令系統の混乱に注意が必要。
プロジェクト組織
特定の課題を解決するために、各部門から専門家を集めて作られる一時的な組織。
目的を達成すると解散する。
カンパニー制組織
事業部制をさらに強化し、各事業部をあたかも一つの独立した会社(カンパニー)のように扱って、大きな権限と責任を持たせる組織形態。

また、経営幹部(CxO)の役割も理解しましょう。

略称英語名称役割
CEO Chief Executive Officer 最高経営責任者。経営のトップ。
CIO Chief Information Officer 最高情報責任者。情報システム戦略の責任者。
CISO Chief Information Security Officer 最高情報セキュリティ責任者。

4. 経営環境の変化

企業を取り巻く環境は常に変化しています。グローバル化や少子高齢化、働き方の多様化などへの対応が求められています。
利益の追求だけでなく、CSR(企業の社会的責任)や環境への配慮(SDGs)など、社会の一員としての役割も重要視されています。

  • ワークライフバランス:仕事と私生活の調和。テレワークやサテライトオフィスの活用など。
  • SRI (社会的責任投資):財務状況だけでなく、法令遵守や環境活動などを考慮して投資先を選ぶこと。

5. 社会における IT 利活用の動向

AIやビッグデータなどの先端技術を活用して、社会課題の解決や新たな価値の創出を目指す動きが加速しています。

Society 5.0(超スマート社会)

サイバー空間(仮想)とフィジカル空間(現実)を融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。
(狩猟→農耕→工業→情報社会に続く5番目の社会)

  • DX (デジタルトランスフォーメーション):データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること。
  • GX (グリーントランスフォーメーション):温室効果ガスの排出削減など、環境配慮を成長の機会と捉えて産業構造を変革すること。

過去問演習(経営・組織論)

平成31年春期 問75

企業が社会的責任を果たすために実施すべき施策のうち,環境対策の観点から実施するものはどれか。

  • 株主に対し,企業の経営状況の透明化を図る。
  • グリーン購入に向けて社内体制を整備する。
  • 災害時における従業員のボランティア活動を支援する制度を構築する。
  • 社内に倫理ヘルプラインを設置する。
平成28年春期 問75

企業経営の透明性を確保するために,企業は誰のために経営を行っているか,トップマネジメントの構造はどうなっているか,組織内部に自浄能力をもっているかなどの視点で,企業活動を監督・監視する仕組みはどれか。

  • コアコンピタンス
  • コーポレートアイデンティティ
  • コーポレートガバナンス
  • ステークホルダアナリシス
令和元年秋期 問74

BCP(事業継続計画)の策定,運用に関する記述として,適切なものはどれか。

  • ITに依存する業務の復旧は,技術的に容易であることを基準に優先付けする。
  • 計画の内容は,経営戦略上の重要事項となるので,上級管理者だけに周知する。
  • 計画の内容は,自社組織が行う範囲に限定する。
  • 自然災害に加え,情報システムの機器故障やマルウェア感染も検討範囲に含める。
平成29年秋期 問76

OJTの特徴はどれか。

  • 一般化された知識や技術に重点を置いた教育が受けられる。
  • 上司や先輩が実務に密着して実践的に知識や技術を教育するので,必要な能力が習得できる。
  • 上司や先輩の資質によらず,一定水準の業務知識が身に付けられる。
  • 職場から離れて教育に専念できる。
令和5年免除 問49

ダイバーシティマネジメントの説明はどれか。

  • 従業員が仕事と生活の調和を図り,やりがいをもって業務に取り組み,組織の活力を向上させることである。
  • 性別や年齢,国籍などの面で従業員の多様性を尊重することによって,組織の活力を向上させることである。
  • 自ら設定した目標の達成を目指して従業員が主体的に業務に取り組み,その達成度に応じて評価が行われることである。
  • 労使双方が労働条件についての合意を形成し,協調して収益の増大を目指すことである。
令和3年免除 問74

マトリックス組織を説明したものはどれか

  • 業務遂行に必要な機能と利益責任を,製品別,顧客別又は地域別にもつことによって,自己完結的な経営活動が展開できる組織である。
  • 構成員が,自己の専門とする職能部門と特定の事業を遂行する部門の両方に所属する組織である。
  • 購買・生産・販売・財務など,仕事の専門性によって機能分化された部門をもつ組織である。
  • 特定の課題の下に各部門から専門家を集めて編成し,期間と目標を定めて活動する一時的かつ柔軟な組織である。
令和5年免除 問56

CIOの説明はどれか。

  • 経営戦略の立案及び業務執行を統括する最高責任者
  • 資金調達,財務報告などの財務面での戦略策定及び執行を統括する最高責任者
  • 自社の技術戦略や研究開発計画の立案及び執行を統括する最高責任者
  • 情報管理,情報システムに関する戦略立案及び執行を統括する最高責任者

業務分析・データ利活用

数学的・統計的な手法を使って、業務の効率化や意思決定を支援する技術です。

1. OR (オペレーションズリサーチ) と IE (経営工学)

「勘や経験」ではなく、「科学的な計算や分析」で最適解を見つけるアプローチです。

計画・意思決定の手法
線形計画法 (LP)
最適解

「限られた資源(材料、資金、時間など)」の中で、「最大の利益(または最小のコスト)」を得るための配分を計算する手法。
例:材料AとBを使って、製品XとYを何個ずつ作れば利益が最大になるか?

日程計画 (PERT/CPM)

プロジェクトの全作業の流れを「アローダイアグラム」という図で表し、全体の所要時間を管理する手法。
最も時間のかかる経路をクリティカルパスと呼び、この遅れが全体の遅れに直結します。

ゲーム理論

ゲーム理論とは、複数の主体(プレイヤー)が関わる状況において、「相手がどのような行動に出るか」を予測・考慮しながら、自らにとって最適な行動(戦略)を数学的に決定しようとする理論です。
自分の利益が自分の行動だけで決まるのではなく、競合相手の行動によっても変化するような状況(戦略的相互依存関係)の分析に適しています。

在庫管理 (EOQ)
「発注費用」と「保管費用」の合計が最小になる「経済的発注量」を算出する。
デルファイ法
複数の専門家にアンケートを繰り返し行い、回答結果をフィードバックしながら意見を収束させて将来予測を行う手法。
分析・品質管理の手法
パレート図 (ABC分析)

「棒グラフ(大きさ順)」と「折れ線グラフ(累積比率)」を組み合わせた図。
「売上の8割を占める上位2割の商品(Aランク)」などを特定し、重点管理するために使います。

散布図と回帰分析

2つのデータの関係(相関)を見る図。
点が右上がりに並べば「正の相関(片方が増えればもう片方も増える)」です。
回帰分析は、この関係を数式(y=ax+bなど)にして将来を予測する手法です。

特性要因図
結果 機械

結果(特性)に至る原因(要因)を魚の骨のような形で整理し、真の原因を探る手法。
フィッシュボーン・ダイアグラムとも呼ばれます。

連関図法
問題 要因A 要因B 要因C

複雑に絡み合った問題の因果関係を矢印でつないで整理し、主要な原因を特定する手法(新QC七つ道具)。

クラスタ分析法
グループA グループB

混在したデータの中から、「似ているもの」同士を集めてグループ(クラスタ)に分ける手法。

故障率曲線(バスタブ曲線)

機械やシステムの運用開始から廃棄に至るまでの、時間経過と故障率の関係を示したグラフです。
その形状が浴槽(バスタブ)に似ていることから名付けられました。

時間 故障率 初期故障期 偶発故障期 摩耗故障期 減少型(初期不良) 定数型(突発故障) 増加型(寿命・劣化)
初期故障期
製造不良などが原因。
テスト等で取り除く。
偶発故障期
故障率は低く安定。
突発的な故障。
摩耗故障期
部品の寿命や摩耗。
予防保全(交換)が必要。

2. データ利活用

ビッグデータオープンデータを収集・加工し、統計手法やAIを用いて分析(データサイエンス)します。

過去問演習(業務分析・データ利活用)

令和5年免除 問55

図は,製品Aの構成部品を示し,括弧内の数字は上位の製品・部品1個当たりの所要数量である。この製品Aを10個生産する場合,部品Cは,少なくとも何個発注する必要があるか。ここで,現在の部品Bの在庫は0個,部品Cの在庫は5個である。

製品構成図
  • 15
  • 20
  • 25
  • 35
令和4年免除 問77

ゲーム理論を使って検討するのに適している業務はどれか。

  • イベント会場の入場ゲート数の決定
  • 売れ筋商品の要因の分析
  • 競争者がいる地域での販売戦略の策定
  • 新規開発商品の需要の予測
令和3年免除 問67

現在の動向から未来を予測したり,システム分析に使用したりする手法であり,専門的知識や経験を有する複数の人にアンケート調査を行い,その結果を互いに参照した上で調査を繰り返して,集団としての意見を収束させる手法はどれか。

  • 因果関係分析法
  • クロスセクション法
  • 時系列回帰分析法
  • デルファイ法
令和2年免除 問75

ABC分析を適用する事例はどれか。

  • 顧客が買物をしたときの購入商品の組合せを把握したい。
  • 商品ごとの販売金額や粗利益額から,売れ筋商品を把握したい。
  • 商品の品切れを起こさないように,きめ細かな販売見込数量を把握したい。
  • 地域ごとのオピニオンリーダーにアンケート調査を行い,市場ニーズを把握したい。
令和6年免除 問58

図は,製品の製造上のある要因の値xと品質特性の値yとの関係をプロットしたものである。この図から読み取れることはどれか。

散布図
  • xからyを推定するためには,2次回帰係数の計算が必要である。
  • xからyを推定するための回帰式は,yからxを推定する回帰式と同じである。
  • xとyの相関係数は正である。
  • xとyの相関係数は負である。
平成30年秋期 問76

連関図法を説明したものはどれか。

  • 事態の進展とともに様々な事象が想定される問題について,対応策を検討して望ましい結果に至るプロセスを定める方法である。
  • 収集した情報を相互の関連によってグループ化し,解決すべき問題点を明確にする方法である。
  • 複雑な要因の絡み合う事象について,その事象間の因果関係を明らかにする方法である。
  • 目的・目標を達成するための手段・方策を順次展開し,最適な手段・方策を追求していく方法である。
令和5年免除 問58

バスタブ曲線を説明したものはどれか。

  • 抜取り検査において,横軸にロットの不良率,縦軸にロットの合格率をとると,ある不良率のロットが合格する確率を知ることができる。不良率が高くなると合格率は下がる。
  • プログラムのテストにおいて,横軸にテスト時間,縦軸に障害累積数をとると,その形状は時間の経過に伴って増加率が次第に高くなり,ある時点以降は増加率が次第に鈍化し,一定の値に漸近していく。
  • 横軸に時間,縦軸に故障率をとって経過を記録すると,使用初期は故障が多く,徐々に減少して一定の故障率に落ち着く。更に時間が経過すると再び故障率は増加する。
  • 横軸に累積生産量,縦軸に生産量1単位当たりのコストをとると,同一製品の累積生産量が増加するにつれて生産量1単位当たりのコストが逓減していくという経験則を表す。
令和6年免除 問47

ビッグデータ分析の前段階として,非構造化データを構造化データに加工する処理を記述している事例はどれか。

  • 関係データベースに蓄積された大量の財務データから必要な条件に合致するデータを抽出し,利用者が扱いやすい表計算ソフトウェアデータに加工する。
  • 個人情報を含むビッグデータを更に利活用するために,特定の個人を識別することができないように匿名化加工する。
  • 住所データ項目の中にある,"ヶ"と"が"の混在や,丁番地の表記不統一を,標準化された表記へ統一するために加工する。
  • ソーシャルメディアの口コミを機械学習によって単語ごとに分解し,要約を作り,分析可能なデータに加工し,関係データベースに保管する。
平成30年春期 問61

蓄積されたデータに対してパターン認識機能や機械学習機能を適用することによって,コールセンターにおける顧客応対業務の質的向上が可能となる事例はどれか。

  • 応対マニュアルや顧客の基本情報を電子化したものを,オペレーターの要求時に応対用の画面にポップアップ画面として表示する。
  • 顧客の問合せの内容に応じて,関連資料や過去の応対に関する全履歴から,最適な回答をリアルタイムで導き出す。
  • 電話応対中のオペレーターが回答に窮したときに,その電話や応対画面をベテランのオペレーターや専門要員に転送する。
  • ベテランのオペレーターが講師となり,応対マニュアルを教材にして,新人オペレーターに対するロールプレイング研修を繰り返して実施する。

会計・財務

1. 企業活動と会計

企業はお金を稼ぐために活動しています。いくら売れば利益が出るのか、赤字にならないラインはどこかを知ることは経営の基本です。

損益分岐点分析 (CVP分析)

損益分岐点 (Break-even Point) とは、売上高と総費用が等しくなり、利益も損失もゼロになる売上高のことです。
これより売上が多ければ黒字、少なければ赤字になります。

費用の分類(固変分解)
固定費
売上の増減に関わらず、必ずかかる一定の費用。
(例:家賃、正社員の人件費、リース料、減価償却費)
変動費
売上の増減に比例して増えたり減ったりする費用。
(例:原材料費、仕入原価、販売手数料、外注費)
計算式と重要指標
公式
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率)

利益
売上高 - 総費用(固定費 + 変動費)
変動費率
売上高に対する変動費の割合。
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
限界利益
売上高から変動費を引いたもの。固定費の回収と利益の創出に充てられる。
限界利益 = 売上高 - 変動費
限界利益率
1 - 変動費率 と同じ意味。
損益分岐点は 固定費 ÷ 限界利益率 とも表せる。
計算例

【例題】 以下の条件でラーメン屋を運営する場合、赤字にならないためには月いくら売り上げる必要があるか?

  • ラーメン1杯:1,000円
  • 材料費(変動費):600円/杯
  • 家賃・人件費(固定費):200,000円/月
1. 変動費率を求める
600円 ÷ 1,000円 = 0.6 (60%)
(※限界利益率は 1 - 0.6 = 0.4)

2. 公式に当てはめる
損益分岐点 = 固定費 200,000円 ÷ (1 - 0.6)
= 200,000円 ÷ 0.4
= 500,000円

答え:50万円(500杯)売れば、利益も損失もゼロ(トントン)になる。

損益分岐点グラフ

売上と費用の関係を図で理解しましょう。

売上数量 金額 固定費 (一定) 総費用 売上高 損益分岐点 利益 (黒字) 損失 (赤字)
財務諸表(決算書)の三本柱

企業の「健康診断書」や「通知表」にあたる書類です。主な3つ(財務三表)を理解しましょう。

1. 貸借対照表 (B/S: Balance Sheet)

決算日時点での「財政状態(お金の集め方と使い道)」を表す表です。
左右の合計金額が必ず一致する(バランスする)ため、バランスシートと呼ばれます。

資産 負債 (他人資本) 純資産 (自己資本)
  • 資産:会社が持っている財産(現金、商品、土地、建物など)。「調達した資金を何に変えて持っているか」。
  • 負債(他人資本):将来返さなければならないお金(借金、買掛金など)。「他人から借りて調達した資金」。
  • 純資産(自己資本):返さなくてよいお金(資本金、過去の利益の蓄積)。「自分で用意した資金」。
重要な関係式(バランス)
  • 資産 = 負債 + 純資産 (左右の合計金額は必ず一致します)
  • 右側全体(負債+純資産)を合わせて「総資本」と呼びます。したがって、資産 = 総資本 となります。
  • 負債は「他人資本」、純資産は「自己資本」とも呼ばれます。
2. 損益計算書 (P/L: Profit and Loss Statement)

ある期間(1年間など)の「経営成績(いくら儲かったか)」を表す表です。
「収益(売上)」から「費用」を引いて「利益」を計算します。

重要な5つの利益
  1. 売上総利益(粗利) = 売上高 - 売上原価
    (商品そのものの儲け)
  2. 営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費
    (本業での儲け。人件費や広告費を引いたもの)
  3. 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
    (本業以外の利息なども含めた、普段通りの儲け)
  4. 税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
    (臨時的な損益を含めた儲け)
  5. 当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等
    (最終的に会社に残る利益)
3. キャッシュフロー計算書 (C/F)

ある期間の「現金の出入り(流れ)」を表す表です。
企業が生き残るためには「利益」だけでなく「手元の現金(キャッシュ)」がいくらあるかが非常に重要です。

なぜC/Fが必要?(黒字倒産の恐怖)
会計上は「売上」が立って黒字でも、実際の代金が振り込まれるのは数ヶ月先ということがよくあります。
その間に仕入れ代金や給料を支払えず、手元の現金が尽きてしまうと、会社は潰れてしまいます。これを黒字倒産と言います。
これを防ぐため、現金の動きだけを追うC/F計算書が必要です。
3つの区分と「家計簿」での例え
区分 企業での意味 家計簿で例えると?
営業C/F
(本業)
本業でどれだけ現金を稼いだか。
プラスであるべき。
給料をもらう。
生活費(食費など)を払う。
投資C/F
(将来)
設備投資や資産運用での出入り。
成長企業は通常マイナス(投資にお金を使うため)。
スキルアップのためにPCを買う(支出)。
株を売って現金にする(収入)。
財務C/F
(借入)
資金調達や返済の状況。
借りるとプラス、返すとマイナス。
住宅ローンを組む(収入)。
ローンを返済する(支出)。
理想的な形(優良企業)
営業 (本業で稼ぎ)、 投資 (将来に投資し)、 財務 (借金を返済している)

2. 財務会計と管理会計

財務会計は外部報告用、管理会計は内部管理用です。
ROE (自己資本利益率)ROA (総資産利益率) などの指標で収益性を分析します。

3. 資産管理

企業が保有する資産(現金、商品、設備など)を適切に管理・評価する仕組みです。

① 流動資産と固定資産

資産は、現金化のしやすさ(1年基準:ワン・イヤー・ルール)によって2つに分類されます。

  • 流動資産
    1年以内に現金化できるもの
    (現金、預金、受取手形、売掛金、商品など)
  • 固定資産
    1年以上使用・保有するもの
    (建物、土地、機械、ソフトウェアなど)
② 棚卸資産の評価(在庫評価)

商品や製品などの在庫(棚卸資産)の単価を計算する方法です。
仕入価格は時期によって変動するため、どの単価を採用するかで利益の額が変わります。

先入先出法 (FIFO: First In First Out)

「先に仕入れたものから先に売れていく」と仮定して、払い出し単価と在庫単価を計算する方法です。

計算例
  1. 4/1 仕入:10個 100円
  2. 4/5 仕入:10個 120円 (値上がり)
  3. 4/10 販売:15個

払い出し(売上原価):
古い100円のを10個 + 新しい120円のを5個 = 1,600円
在庫(資産):
新しい120円のが5個残る = 600円

実際のモノの流れ(古いものから売る)と一致しやすいですが、物価上昇時は在庫の評価額が高くなり、利益が大きく計算される傾向があります。

③ 減価償却 (Depreciation)

建物やパソコンなどの固定資産は、長期間使えます。そのため、購入した年に全額を費用にするのではなく、使用できる期間(耐用年数)にわたって分割して費用計上します。これを減価償却といいます。

定額法

毎年「同額」を償却する。

式: (取得原価 - 残存価額) ÷ 耐用年数
【例】 PCを20万円で購入。耐用年数4年、残存価額0円。
20万 ÷ 4年 = 5万円 / 年 毎年5万円ずつ費用にする。計算が簡単。
定率法

未償却残高に「一定率」を掛ける。

式: 未償却残高(帳簿価額) × 償却率
【例】 20万円、償却率0.5の場合。
1年目:20万 × 0.5 = 10万円 2年目:(20-10)万 × 0.5 = 5万円 3年目:(10-5)万 × 0.5 = 2.5万円 初年度の費用が大きく、徐々に減る。節税効果が早い。

過去問演習(会計・財務)

令和2年免除 問78

損益分岐点の特性を説明したものはどれか。

  • 固定費が変わらないとき,変動費率が低くなると損益分岐点は高くなる。
  • 固定費が変わらないとき,変動費率の変化と損益分岐点の変化は正比例する。
  • 損益分岐点での売上高は,固定費と変動費の和に等しい。
  • 変動費率が変わらないとき,固定費が小さくなると損益分岐点は高くなる。
令和5年免除 問59

新製品の設定価格とその価格での予測需要との関係を表にした。最大利益が見込める新製品の設定価格はどれか。ここで,いずれの場合にも,次の費用が発生するものとする。
固定費:1,000,000円  変動費:600円/個

価格と需要の表
  • 1,000
  • 1,200
  • 1,400
  • 1,600
平成30年春期 問77

貸借対照表の純資産の部に表示される項目はどれか。

  • 売掛金
  • 資本金
  • 社債
  • 投資有価証券
令和4年免除 問78

期末の決算において,表の損益計算資料が得られた。当期の営業利益は何百万円か。

損益計算資料
  • 270
  • 300
  • 310
  • 500
平成29年春期 問77

キャッシュフロー計算書において,営業活動によるキャッシュフローに該当するものはどれか。

  • 株式の発行による収入
  • 商品の仕入れによる支出
  • 短期借入金の返済による支出
  • 有形固定資産の売却による収入
令和6年免除 問59

部品の受払記録が表のように示される場合,先入先出法を採用したときの4月10日の払出単価は何円か。

受払記録
  • 100
  • 110
  • 115
  • 118
令和3年免除 問78

当期の建物の減価償却費を計算すると,何千円になるか。ここで,建物の取得価額は10,000千円,前期までの減価償却累計額は3,000千円であり,償却方法は定額法,会計期間は1年間,耐用年数は20年とし,残存価額は0円とする。

  • 150
  • 350
  • 500
  • 650

法務

知的財産権

1. 知的財産権の概要

知的財産(IP: Intellectual Property)とは

人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物など、財産的な価値を持つ情報のことです。
土地や建物のような形のある「有体物」とは異なり、形のない「無体物」であるため、簡単に模倣(コピー)されてしまうリスクがあります。
そのため、法律によって創作者の権利を保護し、産業や文化の発展を促進する制度が知的財産権です。

主な知的財産権の分類

大きく「産業財産権」と「著作権」に分かれます。登録が必要かどうかが大きな違いです。

分類 保護対象 管轄・登録
産業財産権
(工業所有権)
特許権 高度な発明(技術的アイデア) 特許庁への
出願・登録が必要
(方式主義)
実用新案権 物品の形状や構造の考案(小発明)
意匠権 物品のデザイン(美的外観)
商標権 商品やサービスのマーク・名称
著作権 文芸、学術、美術、音楽、
プログラム、データベースなど
登録不要
創作した時点で発生
(無方式主義)
その他 営業秘密(ノウハウ、顧客名簿など) 不正競争防止法で保護
(登録制度ではない)

2. 著作権法

著作物を保護する権利です。「思想または感情を創作的に表現したもの」が対象となります。
一方で、以下の3つは「アイデア」や「ルール」に該当するため、著作権法によって保護されません

著作権の保護対象外(誰が作っても同じになるもの)
  • プログラム言語
    コンピュータに命令を出すための言葉(文字、記号、体系)。
  • アルゴリズム(解法)
    問題を解決するための手順。
  • プロトコル(規約)
    プログラム言語を使うときの特別な約束。通信の取り決めなど。
著作者人格権
著作者の「心」を守る権利。譲渡できない。
  • 公表権:公表するか決める権利
  • 氏名表示権:名前を表示するか決める権利
  • 同一性保持権:勝手に改変されない権利
著作財産権
「経済的な利益」を守る権利。譲渡可能。
  • 複製権:コピーする権利
  • 公衆送信権:ネット等で送信する権利
  • 翻案権:翻訳やアレンジする権利

3. 産業財産権法とその他の権利

産業の発展を目的とした権利です。

権利存続期間(出願日から)対象例
特許権原則20年スマホの通信技術、新薬の成分
実用新案権10年スマホカバーの形状、便利グッズ
意匠権25年スマホ本体のデザイン、画面デザイン
商標権10年(更新で永続可)Appleのロゴ、サービス名
その他の権利:営業秘密(不正競争防止法)

特許などのように公開・登録はされていませんが、企業が秘密にしている重要な情報(顧客名簿、独自の製造ノウハウ、未公開のレシピなど)を「営業秘密」といいます。
これらが不正に盗まれたり使われたりするのを防ぐ法律が不正競争防止法です。

営業秘密として保護されるための「3要件」

ただ「秘密です!」と言っているだけでは法律で守られません。以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。

① 秘密管理性 「社外秘」のスタンプを押す、鍵のかかるロッカーに入れる、パスワードをかけるなどして、秘密として管理されていること。
② 有用性 事業活動に役立つ情報(役に立つ技術や営業上の情報)であること。
※脱税の裏帳簿などは保護されません。
③ 非公知性 まだ世の中に知られていない(公になっていない)情報であること。
※特に重要!

セキュリティ関連法規

1. サイバー法規

  • サイバーセキュリティ基本法:国の施策の基本理念を定めた法律。
  • 不正アクセス禁止法:他人のID/PWでの侵入や、セキュリティホールの攻撃などを禁止。
  • 刑法:ウイルス作成罪(不正指令電磁的記録に関する罪)などが規定されている。

2. 個人情報保護法・マイナンバー法

個人情報の適正な取り扱いを定めた法律。
本人の同意なしに第三者提供してはいけない(例外あり)。
マイナンバーは「特定個人情報」として、さらに厳格に管理されます。

保護される「個人情報」の例
  • 氏名、住所、生年月日、電話番号
  • 社員の氏名と役職(社内情報であっても個人を特定できれば対象)
  • 個人が識別できる身体的特徴(防犯カメラの映像や、音声データなど)
  • 個人識別符号(マイナンバー、指紋データ、旅券番号、基礎年金番号など)

3. その他法規

  • 電子署名法:電子署名に手書き署名と同等の効力を認める。
  • プロバイダ責任制限法:ネット上の誹謗中傷などの権利侵害に対する対応。

過去問演習(セキュリティ関連法規)

平成27年秋期 問79

サイバーセキュリティ基本法の説明はどれか。

  • 国民に対し,サイバーセキュリティの重要性につき関心と理解を深め,その確保に必要な注意を払うよう努めることを求める規定がある。
  • サイバーセキュリティに関する国及び情報通信事業者の責務を定めたものであり,地方公共団体や教育研究機関についての言及はない。
  • サイバーセキュリティに関する国及び地方公共団体の責務を定めたものであり,民間事業者が努力すべき事項についての規定はない。
  • 地方公共団体を"重要社会基盤事業者"と位置づけ,サイバーセキュリティ関連施策の立案・実施に責任を負うと規定している。
平成23年特別 問80

不正アクセス禁止法において,不正アクセス行為に該当するものはどれか。

  • 会社の重要情報にアクセスし得る者が株式発行の決定を知り,情報の公表前に当該会社の株を売買した。
  • コンピュータウイルスを作成し,他人のコンピュータの画面表示をでたらめにする被害をもたらした。
  • 自分自身で管理運営するホームページに,昨日の新聞に載った報道写真を新聞社に無断で掲載した。
  • 他人の利用者ID,パスワードを許可なく利用して,アクセス制御機能によって制限されているWebサイトにアクセスした。
平成30年秋期 問78

コンピュータウイルスを作成する行為を処罰の対象とする法律はどれか。

  • 刑法
  • 不正アクセス禁止法
  • 不正競争防止法
  • 情報流通プラットフォーム対処法
平成30年秋期 問79

個人情報保護委員会"個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)平成28年11月(平成29年3月一部改正)"によれば,個人情報に該当しないものはどれか。

  • 受付に設置した監視カメラに録画された,本人が判別できる映像データ
  • 個人番号の記載がない,社員に交付する源泉徴収票
  • 指紋認証のための指紋データのバックアップデータ
  • 匿名加工情報に加工された利用者アンケート情報
令和4年免除 問79

電子署名法に関する記述のうち,適切なものはどれか。

  • 電子署名には,電磁的記録ではなく,かつ,コンピュータで処理できないものも含まれる。
  • 電子署名には,民事訴訟法における押印と同様の効力が認められる。
  • 電子署名の認証業務を行うことができるのは,政府が運営する認証局に限られる。
  • 電子署名は共通鍵暗号技術によるものに限られる。

労働関連・取引関連法規

1. 労働関連の法規

労働基準法(労働条件の最低基準)、労働者派遣法(派遣のルール)など。
派遣契約では、指揮命令権は「派遣先」にあります。

2. 取引関連の法規

システム開発や運用を外部に依頼する際、どのような契約を結ぶかによって「責任の所在」や「誰が指示を出すか」が異なります。
トラブル(偽装請負など)を避けるためにも、以下の3つの違いをしっかり理解しましょう。

請負契約
成果物責任

「仕事の完成(成果物)」に対して報酬を支払う契約。
期日までに完成品を納品しなければ、報酬はもらえません。


  • :家を建てる、Webサイトを作って納品する。
  • 指揮命令受注者(ベンダー)
    ※発注者は作業者に直接指示できない。
  • 責任:契約不適合責任(瑕疵担保責任)。完成品に不具合があれば直す義務がある。
準委任契約
業務遂行

「業務を行うこと自体」に対して報酬を支払う契約。
専門家としてベストを尽くせば、成果(完成)が出なくても報酬は発生します。


  • :お医者さんの診療、システム運用の監視、コンサルティング。
  • 指揮命令受注者(ベンダー)
    ※発注者は直接指示できない。
  • 責任:善管注意義務(プロとして最善の注意を払う義務)。
派遣契約
労働力提供

「労働力(時間)」に対して対価を支払う契約。
派遣会社から人が来て、自社の社員のように働いてもらいます。


  • :オフィス常駐のヘルプデスク、事務スタッフ。
  • 指揮命令発注者(派遣先)
    ※ここだけ発注者が直接指示できる!
  • 責任:指揮命令に従って働くこと。
偽装請負(違法!)
契約書上は「請負契約」や「準委任契約」なのに、実態は発注者が作業者に直接細かい指示(指揮命令)を出して働かせている状態のこと。
これは実質「派遣」なのに派遣法のルールを守っていないことになるため、法律で禁止されています。

3. 企業間の取引に関わる契約

NDA (Non-Disclosure Agreement)
秘密保持契約。業務で知った相手の秘密情報を、許可なく第三者に漏らさないという約束。
下請法
親事業者(発注側)が、下請事業者(受注側)に対して、代金の支払いを遅らせたり、不当に買いたたいたりすることを防ぐ法律。
PL法 (製造物責任法)
製品の欠陥によって損害が出た場合、製造業者の責任を問える法律。ソフトウェア単体は対象外だが、組み込み機器などは対象になる。
ソフトウェアのライセンス契約

ソフトを買うとは、「ソフトそのもの」ではなく「使用権(ライセンス)」を買うことです。

ボリュームライセンス契約
企業向け。「PC100台分」のようにまとめて契約する方式。個別に買うより安く、管理も楽になる。
サイトライセンス契約
特定の場所(企業、学校、部門など)に限定して、その中の複数のコンピュータで使用することを認める契約方式。
シュリンクラップ契約
店頭のパッケージソフトなどで、箱を包んでいる透明フィルム(シュリンクラップ)を「破いた時点」で利用規約に同意したとみなす契約方式。

過去問演習(労働・取引法規)

令和3年免除 問80

発注者と受注者の間でソフトウェア開発における請負契約を締結した。ただし,発注者の事業所で作業を実施することになっている。この場合,指揮命令権と雇用契約に関して,適切なものはどれか。

  • 指揮命令権は発注者にあり,さらに,発注者の事業所での作業を実施可能にするために,受注者に所属する作業者は,新たな雇用契約を発注者と結ぶ。
  • 指揮命令権は発注者にあり,受注者に所属する作業者は,新たな雇用契約を発注者と結ぶことなく,発注者の事業所で作業を実施する。
  • 指揮命令権は発注者にないが,発注者の事業所で作業を実施可能にするために,受注者に所属する作業者は,新たな雇用契約を発注者と結ぶ。
  • 指揮命令権は発注者になく,受注者に所属する作業者は,新たな雇用契約を発注者と結ぶことなく,発注者の事業所で作業を実施する。
平成29年秋期 問79

図は,企業と労働者の関係を表している。企業Bと労働者Cの関係を表す記述として正しいものはどれか。

企業と労働者の関係図
  • "契約"が請負契約で,企業Aが受託者,企業Bが委託者であるとき,企業Bと労働者Cとの間には,指揮命令関係が生じる。
  • "契約"が出向にかかわる契約で,企業Aが企業Bに労働者Cを出向させたとき,企業Bと労働者Cとの間には指揮命令関係が生じる。
  • "契約"が労働者派遣契約で,企業Aが派遣元,企業Bが派遣先であるとき,企業Bと労働者Cの間にも,雇用関係が生じる。
  • "契約"が労働者派遣契約で,企業Aが派遣元,企業Bが派遣先であるとき,企業Bに労働者Cが出向しているといえる。
平成26年春期 問79

ソフトウェア開発を外部業者へ委託する際に,納品後一定の期間内に発見された不具合を無償で修復してもらう根拠となる項目として,契約書に記載するものはどれか。

  • 契約不適合責任
  • 善管注意義務
  • 損害賠償責任
  • 秘密保持義務
令和5年免除 問60

ボリュームライセンス契約を説明したものはどれか。

  • 企業などソフトウェアの大量購入者向けに,インストールできる台数をあらかじめ取り決め,ソフトウェアの使用を認める契約
  • 使用場所を限定した契約であり,特定の施設の中であれば台数や人数に制限なく使用が許される契約
  • ソフトウェアをインターネットからダウンロードしたとき画面に表示される契約内容に同意するを選択することによって,使用が許される契約
  • 標準の使用許諾条件を定め,その範囲で一定量のパッケージの包装を解いたときに,権利者と購入者との間に使用許諾契約が自動的に成立したとみなす契約